算定基礎届とは
健康保険や厚生年金保険の被保険者が実際に受ける報酬と、すでに決められている標準報酬月額とが、大きくかけ離れないように、毎年1回、報酬月額を届け出て、標準報酬月額を決定します。これを定時決定といい、その届出を「算定基礎届」と言います。
対象となるのは、7月1日現在で使用している全被保険者で、3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額によって計算されます。決定された標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。
算定基礎届の対象となる人
算定基礎届の対象
①5月31日までに資格を取得した被保険者で、7月1日現在在職中の人
②7月1日以降に退職をする人
③休職(育児休業・介護休業含む)中、欠勤中の人
算定基礎届の対象とならない
①6 月 1 日以降に資格取得した人
②6 月 30 日以前に退職した人
③7 月改定の月額変更届を提出する人
④8 月または 9 月改定の月額変更届を提出する予定の人
報酬月額の算定方法
算定基礎届に記入する報酬は、4月・5月・6月の各月に実際に支払われた報酬が対象となります。その際に、その月の報酬を計算する基礎となった日数(支払い基礎日数)に17日未満の月がある場合は、その月を除外して計算します。
(例)3月1日から3月31日までの給料を4月5日に支払うなど、給料の支払いが翌月になる場合には、その事業所の給料は3月分であっても、翌4月に受けた報酬として取り扱います
支払基礎日数について
支払基礎日数とは、その報酬の支払い対象となった日数のことをいいます。
時給制・日給制の場合は、実際の出勤日数(有給休暇も含みます。)が支払基礎日数となります。
月給制・週給制の場合は、出勤日数に関係なく暦日数になります。
ただし、欠勤日数分だけ給料が差し引かれる場合は、就業規則、給与規程等に基づき事業所が定めた日数から、欠勤日数を控除した日数となります。算定基礎届の「給与計算の基礎日数」欄に記入してください。
月給の場合の例
20日締め、当月25日払い →3/21~4/20分を4月25日払いなので=31日
末締め、翌月末払い →3/1~3/31分を4月30日払いなので=31日
末締め、当月末払い →4/1~4/30分を4月30日払いなので=30日
末締め、翌々月5日払い →2/1~2/28分を4月5日払いなので=28日
支払基礎日数が17日以上の月が対象

上記の場合には、17日未満の月を除いた4月・6月の報酬の合計をその月数「2」で割って報酬月額を算出します。
●3ヵ月とも17日以上
→報酬合計額を3で割ります
●2ヵ月が17日以上
→報酬合計額を2で割ります
●1ヵ月のみ17日以上
→その月のみの報酬で算出
給与の支払対象となる期間の途中から入社したとき


途中入社の場合
入社月に1ヵ月分が支給されないときには、支払基礎日数が17日以上あってもその月は除外します。
パートタイム労働者の算定方法
4月~6月の支払基礎日数に17日以上の月がある場合には、その月の報酬を対象に算定します。3ヵ月とも17日未満の場合には、15日以上の月の報酬を算定します。
●支払基礎日数は3ヵ月とも17日以上→3ヵ月の報酬月額の平均額をもとに決定
↓ない
●支払基礎日数17日以上の月が1ヵ月以上→17日以上の月の平均額をもとに決定
↓ない
●支払基礎日数は3ヵ月とも15日以上→3ヵ月の報酬月額の平均額をもとに決定
↓ない
●支払基礎日数15日以上の月が1ヵ月以上→15日以上の月の平均額をもとに決定
↓ない
→従前の標準報酬月額で決定
※パートタイム労働者とは
1週間の所定労働時間及び1ヵ月の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3以上である場合
随時改定(月額変更届)
定時決定により決定された標準報酬月額は、原則として1年間使用されますが、昇給や降格などにより、報酬の額に大幅な変動があったときは、次回の定時決定を待たずに、報酬月額の変更を行います。これを随時改定といい、その届出を月額変更届といいます。
月額変更届が必要となるとき
下記のすべてに該当する必要があります。1つでも欠けると届出は必要ありません。
1 昇給や降格等の固定的賃金の変動、または賃金体系に変更があった
2 変動月以後引き続く3ヵ月とも支払基礎日数が17日以上ある
3 変動月から3ヵ月間の報酬の平均額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差
固定的賃金と非固定的賃金
支給額・支給率が決まっているもの
→固定的賃金 基本給(月給、週休、日給)、家族手当、通勤手当、住宅手当、役付手当など
稼働実績などによって支給されるもの
→非固定的賃金 残業手当、能力手当、日直手当、勤務手当、精勤手当など
◎随時改定(月額変更)には、固定的賃金の変動または賃金体系の変更が必要
・昇給、降格
・家族手当や役付手当などの固定的な手当の変更
・日給や時間給などの基礎単価の変更
・日給制から月給制への変更
・固定的な手当を新規支給
残業代が増えたなどの理由だけでは、随時改定は行われません
1等級差でも随時改定の対象となる場合
標準報酬月額には上限・下限があるため、大幅に報酬が変わっても2等級以上の差が出ないこともあります。1等級差でも随時改定が行われる場合があるので注意してください。
厚生年金保険の場合 | |||
ケース | 従前の標準報酬月額 | 報酬の平均月額 | 改定後の標準報酬月額 |
昇給の場合 | 31等級・620千円 | 665千円以上 | 32等級・650千円 |
1等級・88千円で 報酬月額83千円未満 | 93千円以上 | 2等級・98千円 | |
降給の場合 | 32等級・650千円で 報酬月額665千円以上 | 635千円未満 | 31等級・620千円 |
2等級・98千円 | 83千円未満 | 1等級・88千円 |
算定基礎届の提出時期は7月1 日から7月10日までとなっております。
6月に支払いのあった報酬月額までを対象としますので、短い期間の中で処理をしなくてはなりません。
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